Webアクセシビリティ入門

〜 音声ブラウザを中心に 〜

ACRI代表 持田 徹

本日の主な内容

  1. ACRIのご紹介
  2. Web利用の現状と課題
  3. 音声ブラウザについて
  4. 様々なWebサイトを聞いてみましょう
  5. Webアクセシビリティの基本的な考え方
  6. 関連する話題のご紹介

ACRIのご紹介

「ACRI (アクリ)」について

名前
Accessible Contents Research Initiativeの略
団体の種類
営利を目的としない任意団体
活動の目的
誰でも利用できるWebサイトの研究と普及・啓蒙
活動内容
メーリングリストでの情報交換(約83アドレス)
講演、研究会の開催
関連ソフトウェアの開発と配布 など

「ACRIプロジェクトのご案内と参加のお誘い」もご覧下さい

ACRIの活動実績

  • KOF 2002にてステージ出演
  • 総務省「みんなのウェブ」コンテストで選評
  • 「Webアクセシビリティ・シンポジウム」にて講演
  • 京都大学 東南アジア研究所 Webサイト アクセシビリティ化支援作業
  • 大垣市情報工房パソコン研修『Webアクセシビリティを考える 〜視覚障害者とパソコン〜』にて講演
  • 「ACRI研究会」を、4度開催

ACRI研究会について

目的
Webアクセシビリティ概念の普及
書籍などでは得られない情報の共有
研究会の方針
毎回テーマを設定して適宜開催する
開催実績 (当日の資料はWebで公開中)
第1回 2004年4月7日「Webサイトのユニバーサルデザイン入門編」(41名参加)
第2回 2004年9月29日「Webアクセシビリティの一歩先へ」(20名参加)
第2回 補講 2004年10月19日「Webアクセシビリティの一歩先へ」(10名参加)

Web利用の現状

Webは便利になりました

  • Web利用は、特別なことではなくなった
  • 生活のさまざまな場面で活用できる
  • 行政からの連絡にもWebサイトが多く利用されている

家にいながら利用できる、便利なサービスたち

  • 買い物: 家で選んで、宅配もしてくれる (ショッピング)
  • 銀行口座の残高確認、振込み (ネットバンキング)
  • 交通機関の料金や時刻、目的地への経路を調べる

例えば... 視覚障碍者にとってのWeb

  • 視覚障碍者にとってWebは、 自主的に情報を得られる数少ない手段と言われる
  • 家で利用できるショッピング、ネットバンキングや経路検索は、 外出が困難な視覚障碍者にも、大変便利

しかし...

  • Webサイトは文字や画像からできていて、「読む」ものなので、 そのままでは視覚障碍者の利用は困難
  • 障碍によってWebが利用できないと、 それが生活に「情報格差(デジタルデバイド)」を生む

そこで... 支援技術としての音声ブラウザ

音声ブラウザ
Webサイトの文字や、画像の「代替文字列*」を読み上げ(音読) してくれるソフトウェア
日本IBM社の「ホームページリーダー」が代表的
支援技術 (アシスティブ・テクノロジー)
個々の障碍を補い、障碍者の生活を助ける技術
音声ブラウザは、支援技術のなかま
他にスクリーンリーダー、点字ディスプレイなど
パソコン以外の、車椅子なども「支援技術」のなかま
*: 代替文字列
画像が利用できない時に、代わりに利用される説明文で、ALT属性とも

音声ブラウザについて

音声ブラウザの具体例: ホームページリーダー

ホームページリーダー
日本IBM社が販売する音声ブラウザ
Webの文字列を合成音声で読み上げ
スクリーンリーダー* もCDについてくる
マウスの代わりにキーボードで操作可能
文字の拡大やハイコントラスト表示も可能
音声メールソフト「ホームページメーラー」もついてる
30日間無料使用可能な「お試し版」あり
*: スクリーンリーダー
パソコン画面を読み上げ、音声での操作を可能にするソフト

画面構成について

  1. ヒストリーリスト表示: 今までに表示したページ一覧
  2. グラフィック表示: 普通のブラウザで見たときの表示
  3. テキスト表示: 現在、読み上げている文字をあらわす
  4. 情報表示: 失敗した場合などのメッセージを表示

基本的な使い方 (1)

いざ実践

サンプルのWebサイトを、実際に読み上げてみましょう。

夏休みの日記 2004年8月29日

実践のポイント

注目していただきたいポイントは、以下の3点です。

  1. 普通のテキストとリンクの読み上げの違い
  2. 見出しの読み上げ方法
  3. 画像の読み上げの方法

基本的な使い方 (2)

実践ポイントの結果

  1. 普通のテキストは男性の声、リンク部分は女性の声
  2. 見出しの前に決まった音がする、少しゆっくり読む
  3. 画像の代替文字列を読み上げる、なければ無音

様々なWebサイトを聞いてみましょう

インターネットのサイトを読み上げてみます

音声ブラウザで読み上げる際のポイント

  1. 何のために、そこを利用するか想像してみて下さい
  2. そのサイトでほしい情報は、すぐに得られますか?
  3. また、このWebサイトを利用したいと思いますか?
  4. 他に、感じたことはありませんか?

聞いた結果を整理しましょう

どのような問題がありましたか?

  1. そもそも、何も聞こえないWebサイトがある
  2. 本文が、なかなか読まれない(新聞など)
  3. 余計な文字が、たくさん読み上げられる
  4. その他

問題が起きる原因

そもそも、何も聞こえないWebサイトがある
本文全体が画像でできている
本文が、なかなか読まれない(新聞など)
レイアウトを考える時に音声ブラウザを考えていない
余計な文字が、たくさん読み上げられる
リンクになっている画像は、URLを読み上げる

すべてに共通する問題点は、Webサイトを作成する人が、 「このWebサイトは音声ブラウザでも利用するかもしれない」 といった配慮がなされていないこと。

Webサイトを作る人に、音声ブラウザなどの利用環境から利用されることを意識してもらうことが重要

Webアクセシビリティの基本的な考え方

「多様な利用環境」について考えてみましょう

  1. 「見えるが、聞こえないWebサイト」がある
  2. そのWebサイトは、音声ブラウザからは利用が困難

もう少し考えを進め、広げると...

  1. その他の障碍をお持ちの方は利用できるか?
  2. その方々も、支援技術でWebサイトを利用するはず

そのWebサイトから誰でも情報を得られるかが重要

誰でもでないと:
買い物サイトでは顧客を逃がしてしまう...
行政サイトではサービスの不公正が起きてしまう...

Webアクセシビリティとは (1)

Webアクセシビリティ(Web Accessibility)
Webサイトの情報を、誰でも得られるかどうか
Webアクセシビリティの「誰でも」とは...
身体に障碍のある方
年齢に伴う身体機能の低下のある方
事故・ケガ、病気等で一時的な障害が生じている方
環境や状況による制限(大騒音の中、両手で荷物、...)

身体障碍者だけでなく、健常者も含めて「誰でも」と考える

Webアクセシビリティとは (2)

「アクセシブルでない」ために、健常者も困る例
あるソフトがないと、音や映像が楽しめない
MacintoshやLinuxだと、Webサイトが利用できない
Internet Explorerでないと、Webサイトが見られない
画面の解像度が小さいと、Webサイトが利用できない
字が小さくて、文章が読めない
「アクセシブルなWebサイト」とは:
いろんな人の、いろんな利用状況に応じて、 情報がきちんと得られるようになっているWebサイト。

アクセシブルなWebサイトを増やすには (1)

Webサイトを作成する人に、アクセシブルなWebサイトを作るよう働きかけるしかないのではないでしょうか

でもWebサイトは、簡単に作成できるので、「Webサイトを作成する人」は、かなりの数に上ります

沢山のWebサイトを作成する人に、Webアクセシビリティの重要性を理解していただき、 「どうすればアクセシブルなWebサイトになるか」のノウハウを伝える必要があります

アクセシブルなWebサイトを増やすには (2)

Webアクセシビリティの重要性の普及
ACRIの活動目的で、セミナーや講演をしています
各地で、同様のセミナーや講演が多く催されています
アクセシブルなWebサイト作成のノウハウ
『JIS X 8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ』が規格化
Web Content Accessibility Guidelines 2.0
リハビリテーション法第508条 電子・情報技術アクセシビリティ基準 (アメリカ)
ノウハウを解説した書籍が何冊か出版されています
アクセシブルなWebサイトかチェックするツールがある

アクセシブルなWebサイトを増やすには (3)

Webサイトを作らない方も、普及活動はできると思います。

  1. 音声ブラウザなどで利用して、不都合な点を連絡する
  2. チェックツールでのチェック結果を連絡する

たくさんの方の力を結集し、音声ブラウザなど、 どんな環境でも利用できるアクセシブルなWebサイトを増やし、 誰もが便利に生活できる環境の実現を目指しましょう!!

関連する話題のご紹介

Webユーザビリティ

Webユーザビリティ(Web Usability)
そのWebサイトの使いやすさをあらわす

使いにくいWebサイトの例:

  • 内容が理解しづらい
  • 情報を得るのに長く待たされる
  • ほしい情報が、どこに書いてあるのかわからない
  • 元のページに戻ろうにも、同じところを ぐるぐる回る
  • 小さいウィンドウが勝手に、たくさん開いて、消せない

これらが原因で、情報が得られなかった場合(途中で利用をやめたなど)、アクセシビリティ低下にもつながる。

ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザイン(Universal Design)
「デザイン変更や特別仕様の設計なく、最大限可能な限りさまざまな人々に利用しやすい製品・環境等のデザイン」

「バリアフリー」が、障碍の部位や程度によるバリアに(後付け、補助的に)対処するのに対し、「ユニバーサルデザイン」は設計段階からあらゆる人が楽しく快適に使える物作りを目指す

近年、Webサイトの作成にも、この考えを導入することが多くなっている

長らくのご清聴、ありがとうございました

初版公開: 2004年10月23日(土曜日)、 最終更新日: 2004年10月23日(土曜日)
Copyright © 2004, Accessible Contents Research Initiative All rights reserved.